Thursday, February 25
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ラマが体内で新型コロナウイルスの抗体として期待できるナノボディ「NIH-CoVnb-112」を生成することが明らかに – GIGAZINE


ラクダやアルパカ、ラマといったラクダ科の哺乳類は体内で標的抗原に結合する「ナノボディ」を生成することで知られています。そして新たに、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して有効であることが期待できるナノボディ群「NIH-CoVnb-112」を、ラマが体内で生成することを研究者が発見しました。

Neuroscientists isolate promising mini antibodies against COVID-19 from a llama – ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2020/12/201222081257.htm

SARS-CoV-2はエンベロープという脂質膜を持つ1本鎖のRNAウイルスで、表面には「スパイクタンパク質」と呼ばれる、先端が膨らんだタンパク質の突起を複数持っています。このスパイクタンパク質がヒト細胞の表面にある受容体タンパク質であるアンジオテンシン変換酵素2タンパク質(ACE2受容体)と結合するプロセスは、SARS-CoV-2が人体に感染する上で重要なプロセスとなっています。

by Scientific Animations

アメリカ国立衛生研究所(NIH)の脳イメージングラボで働く神経科学者のトーマス・エスパルザ氏とデイビッド・ブロディ氏が、「Cormac」と名付けたラマの体内で生成された「SARS-CoV-2に対して有望なナノボディ群」を分離することに成功しています。

SARS-CoV-2に対して有効であることが期待できるナノボディ群は「NIH-CoVnb-112」と名付けられており、このナノボディ群の中の少なくともひとつがSARS-CoV-2のスパイクタンパク質と結合し、人体への感染を防ぐことができると明らかになりました。

加えて、「NIH-CoVnb-112がSARS-CoV-2のスパイクタンパク質と結合する」ということは、SARS-CoV-2を検出できるということを意味するそうです。他にも、NIH-CoVnb-112は液体またはエアロゾルの状態でも同等に機能することが明らかになっています。


ブロディ氏は「TJ(エスパルザ氏)と私は何年もの間、ナノボディを使って脳機能イメージングを改善する方法についてテストを続けてきました。そして新型コロナウイルスのパンデミックが発生した時、これは一生に一度の危機的な状況であると考え、ウイルスとの戦いに参戦することを決めました。我々が見つけた抗新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のナノボディが、パンデミックとの戦いにおいて非常に効果的で用途が広いことを願っています」と語っています。

ナノボディはラクダ科の哺乳類の免疫系が自然生成するという特殊な抗体。ナノボディは平均すると人体で生成される抗体の約10分の1程度の重量です。ナノボディは通常の抗体よりも安定しており、製造コストが低く、エンジニアリングが容易という特徴を有しているため、エスパルザ氏とブロディ氏はナノボディの医学利用について研究を続けてきたとのこと。実際、ナノボディが血液疾患のひとつである血栓性血小板減少性紫斑病の治療に有効であることが示されています。

エスパルザ氏ら研究チームは、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質と結合するナノボディを分離する方法を開発。Cormacが体内で生成する何百種類ものナノボディをSARS-CoV-2と反応させ、その中から抗体として強力な効果を発揮できそうな13種類のナノボディを特定することに成功しています。この実験は初期段階にあるため、「NIH-CoVnb-112」と呼ばれるナノボディ群がSARS-CoV-2に対して有効である可能性が示された段階にあるとのこと。なお、研究室内で行われた実験では、研究室で生成されたナノボディと比べて、NIH-CoVnb-112は2~10倍も強力にスパイクタンパク質と結合することが明らかになっています。


さらに、研究チームは「SARS-CoV-2が人体に感染することを予防するのに、NIH-CoVnb-112は有効か?」を調べるために、SARS-CoV-2を模倣した無害な疑似ウイルスを遺伝子変異で作成。この疑似ウイルスのスパイクタンパク質が、ACE2受容体を持つ細胞に結合することを確認し、NIH-CoVnb-112と疑似ウイルスの反応を調べています。この調査により、比較的低レベルのNIH-CoVnb-112が、疑似ウイルスのスパイクタンパク質と結合し、ウイルスが細胞に感染することを防ぐことができることを確認したそうです。

加えて、ナノボディをぜんそく患者の治療に使用されるネブライザーのような吸入器を通して吸引しても、感染を防ぐのに効果があることが明らかになっています。これについてブロディ氏は「ナノボディのエキサイティングな特徴のひとつが、ほとんどの抗体と異なり、エアロゾル化して吸引しても肺や気道で効果を発揮するという点です」と述べました。

なお、エスパルザ氏とブロディ氏が率いる研究チームはNIH-CoVnb-112の特許を申請しています。エスパルザ氏は「NIHの支援を受け、これらのナノボディがCOVID-19の安全で効果的な予防治療になりうるかどうかをテストするために迅速に前進しています」と語り、今後のNIH-CoVnb-112の活躍に期待を寄せています。

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